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マギの教え

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マギの教え(1)

運命について―

 

 

 仏教なんかですと、他人の運命を占ってはいけないとお釈迦様が言った。しかし密教には、密教占星術みたいなものがあって、占いを禁じるのは小乗的な教えであって、大乗の場合は、むしろそれを方便として使えという形になっている。それでは、ゾロアスター教ではどう考えているのか。例えば、こういう事がある。アケメネス朝がアレクサンダーによって滅ぼされる。その後、三世紀にササン朝が興って、ゾロアスター教がイランの国教になる。で、そのササン朝を創ったのはアルダシールという人なんですけれども、彼は非常に英明な王様で、マギの出身だと言われている。マギというのは聖職者ですね。古代ペルシアの聖職者のことをマギと言います。そのマギがサ産業を創った。そしてアルダシールの相談相手になった、有名なマギで、タンサールという人がいた。このタンサールが、運命というものを論じているのです。

 そこでは、こういうことを言っている。ある人たちは自分の力で全てのことができると。運命というものを無視して考えている。一方で同じゾロアスター教徒の中には、運命が全てである、自分の力なんて運命の前にあっては全くの無力であると考えている人たちもいる。これはいわゆる運命論者です。イランでは、イスラームになってから特にその傾向が強まります。ゾロアスター教徒の中には、全てが自分の力であるというような、勇気のある人たちもいる一方で、このような運命論者もいるわけです。

 それに対して、ゾロアスター教の最高聖職者であるタンサールが言うには、両者とも間違っているというのです。じゃ、どういうことなのかというと、彼はこういう譬えを出します。それは人生というのは旅であると。人生というものは旅である。これは古くからイラン人に言われている。彼の世界から此の世界を旅しながら、また別の世界に行く。そして昔のイラン人たちは旅をする時にロバを連れて行く。ロバに荷物を持たせるわけです。その荷物というものは、どういう形でロバに持たせるかというと、革袋に入った二つの荷物の間をひもでつないで、そのひもをロバの背に掛けるわけです。こう二つが釣り合うようにして、それをロバの背にのせるわけです。その二つの荷物の一方が運命であり、他の一つが自力であるわけです。その二つが、バランスが取れていなければいけない。どっちかが重いと、ロバはひっくり返ってしまう。旅する時のロバに持たせる荷物は、バランスの取れた状態で、背に掛けるであろう、そのように運命というものと、自分の努力というものは、まさにバランスよく両方が共に重要なんだと、このように言うわけです。で運命と自力、その二つのものをバランスよく取りながら人生の旅をするのを勧めるのです。どっちかだけなら、ひっくりかえっちゃうわけですよ。旅できなくなっちゃう。人生というものが進めなくなっちゃうわけですね。

 それは良い意味で中庸の考えである。どっち着かずと取られるかもしれないですけれど、私はこれはやはり真実じゃないかと思います。人間というのは、特に若い時はそうなんですけれども、極端に走りやすい。けれど極端というものは、やはり無理があって、真実ではないんです。運命が全てだとか、自力が全てだとかいいますけれども、冷静に考えてみれば此の二つのバランスが大切なんです。そのバランスを意識し、うまく運用しながら人生の旅を続けていくということが、一番重要なんです。これは、タンサール自身の言葉ではなくて、私が考えることなんですけれども、こういう譬えもできるんじゃないかと思うんです。それは自力でいくら畑を耕して、種を蒔いても、冬には実はならないんですよ。枯れてしまうんです。冬という季節の運命がありますね。この時にいくら種を蒔いて、耕したとしても、これは実らない。しかし春に種を蒔かないで、秋の収穫を得ようとしたってこれは無理なんです。自分で畑を耕して、水をやって、草を取って、そして季節の運命である、夏とか秋とか来て、はじめて実りというのが得られるわけでしょ。自分の努力と運命の巡り、この両者なんで、この両者をいかにバランスよく使うかを考えるべきなのです。自分の運勢というものをやっぱり見極めてですね、出るべき時には出る、引くべき時には引く、押さえるべき時には押さえる。これもやはり運命を見なければできない。雨の時には、やっぱり傘を持っていくでしょう。雨でも俺が行けば晴れるんだという、そういう人はいますけれども、そこまで無理することはない。やはり自分の努力と、ある意味では他力と申しますか、運命というものは、バランスを見ながら生きていくということが必要なんだと思います。

20102月 銀座にて

 

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