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ゾロアスター教入門 |
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ゾロアスター教入門(13) 岡田 明憲 朝日カルチャー講義報告 ゾロアスター教入門 —水の女神アナーヒター— 時:2014年4月12日
ゾロアスター教は火の宗教、といったイメージが強い。これは中国や日本でゾロアスター教を拝火教といったり、ヨーロッパ人がゾロアスター教徒のことをfire-worshipperと言ったりすることに表れている。しかし一方でゾロアスター教は水の宗教でもある。ゾロアスター教を代表する女神アナーヒターは水の神である。さらに注意すべきは、実は我々がゾロアスター教と言っている宗教と、ゾロアスター自身の教えは完全に一致するものではないのである。世間の人々がゾロアスター教と言ったとき、そこにはゾロアスター自身の教えだけでなく、ゾロアスター以前からあるイラン系の民族の様々な神々への信仰やオリエントの宗教思想等を含んでいるのである。 ゾロアスター教の宗祖であるゾロアスター自身は、アナーヒターを無視した。彼の没後、とくにアルタクセルクセス?世の時代に、アナーヒターは復活し、大衆の人気を集めた。これはアルタクセルクセス?世がダリウス大王ほど統治に長けておらず、彼の帝国内にいる多種多様な民族を治めるため、民衆に人気のある古い神々を利用する必要があったからである。つまり彼以後のゾロアスター教とは広く帝国を治めるため、統治と宗教を結びつけて再編された宗教なのである。このようにゾロアスター教はゾロアスターの教えだけでなく、様々な信仰や他の宗教文化を含んでいったのである。 さて、ゾロアスター教の聖典『アヴェスタ』の中において、アナーヒターに捧げる讃歌は特に長いものである。それは、いかにアナーヒターが民衆に支持されていたかを示す。「水」とそのイメージはイラン人の信仰の源泉だとも言える。信仰とは言葉で表される思想よりも心で感じるものであり、心こそ宗教が生まれでてくる場所なのである。そしてイラン人の心のイメージの元型的なものとして、「水」があり、それが女神アナーヒターとなるのである。だからこそアナーヒターは、ゾロアスターに無視されても、民衆の根強い人気を保ち得たのである。 (香月・記) Copyright Mazda Yasna Japan all Rights Reserved |