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ゾロアスター教入門(10)

岡田明憲 朝日カルチャー講義報告

アーリア人の故郷

時:20131012

 

 世界の最新の研究成果をふまえて、欧米諸国で危険視されてきた「アーリア」というテーマを、イランを中心とした視点から、再考する講義であった。これで、「アーリア」という言葉が、世間では誤って使われているという事実を、各受講者は学ぶことができたはずである。その内容を下記に要約する。

 

 イラン・イスラーム共和国とは、「アーリア人のイスラーム共和国」という意味である。「イラン」という言語は「アリヤ」という古代ペルシア語からきている。イラン人は古くから、自らを「アーリア」と呼んできたのである。また「アーリア」は、常に彼らの統治思想と結びつけられて、用いられていた。それはゾロアスター教が国教であった時代からイスラーム共和国の現代まで、変わらずイラン人の精神を貫いている。

 ヨーロッパにおいて「アーリア」という言葉が頻繁に使われるようになったのは、18世紀に始まった言語学研究の成果による。彼らヨーロッパの言語学者たちは、世界の言語を系統化し、インド・ヨーロッパ語族の一つのグループとして、インド・イランにおいて使われている言語を中心にアーリア語族と名付けた(しかし今ではインド・イラン語族ということが多い)。また彼らはこの言語を民族、文化と結びつけて捉えてきた。現在のゾロアスター教研究は、この言語学研究から始まったという、特殊な事情を持っている。

 ではアーリア人とはどこから来て、どのような意味を持って使われてきたのか。これらを明らかにするため、ゾロアスター教の聖典『アヴェスタ』が比較言語学、神話学、考古学の分野において研究されてきた。『アヴェスタ』の中でゾロアスターが、彼が生まれたとされるAiryana Vaejah(アルヤナ・ウァエージェフ:アーリア人の土地)において、川の女神であるアナーヒターを奉ったとされる下りがある。一般にアーリアの語源は「善き生まれ」という意味に関係する。そして、最近の研究ではアルヤナ・ウァエージェフとはBMAC(バクトリアとマルギアナの考古学的な結合地帯)であり、アーリア人は青銅期頃、登場したとされている。

 しかし長い年月、イラン人に受け継がれてきた精神は、このような歴史的・地理的にアーリアの出自を特定することで明らかになるわけではない。そこには彼らのパラダイス思想が反映されているのである。この思想は彼らの歴史を通して、イラン人が代々受け継いできた、民族の記憶である。この記憶が神話となり、理想化されたのである。そして彼らがアーリア人であると言うとき、それは過去の記憶を原動力とし、未来の理想に向かう姿勢が表わされているのである。

(香月・記)

 

 

 

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