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ゾロアスター教入門 |
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ゾロアスター教入門(16) 岡田 明憲 講義報告 ヤジド教徒とは 時:2014年10月4日
ヤジド教徒に付いて、最近のイスラム国兵士による虐殺や、アメリカ等の空爆作戦などの報道で、にわかに日本のメディア等に登場している。その内容はイスラム教、キリスト教、ゾロアスター教等の混合宗教と報じられている。はたしてそれは正しいのか。ヤジド教徒とは一体どのような宗教なのか。 ヤジド教徒が広くその存在を知られるようになったのは、彼らが政情不安定な祖国から逃れ、19世紀にはアルメニアやトルコ、20世紀に入ってからは主にドイツへ移住したことによる。しかし当初、ヤジド教は教典を持っていない宗教と考えられていた。ところが実はヤジド教徒たちが、口伝による教典の存在を隠していたことが徐々にわかってきた。また彼ら自身、ヨーロッパへの移住によって、彼らの文化を認識してもらう必要や、アイデンティティの消滅の危機を感じたことで、ヤジド教の研究が進展することとなった。 現在、ヤジド教徒は世界に20〜25万人いるとされている。その起源は12世紀にシェイク・アディが設立したスンニ派スーフィー教団である。シェイク・アディはレバノン出身のアラビア人であった。現在でもヤジド教聖職者にはアラビア系の家系があるのは、このためである。13世紀にモンゴルが現在のイラン、イラクへ侵略したことで、山岳地帯に引きこもり、独自性を発揮していくようになった。この一つにシェイク・アディを天使と同一視し、個人崇拝するというものがあった。イスラム教ではムハンマド以外の個人崇拝を堅く禁じており、故に、イスラム正統派からヤジド教は悪魔崇拝といわれるようになったのである。 また例えばゾロアスター教と比較した時、確かに聖衣と聖帯を身につけるなどといった、似た面もあるが、一方その色はヤジド教では、ゾロアスター教では悪の色とされる黒である。このような類似や相違は他の宗教との比較でも見つけることができる。これらの宗教に類似が見られるのは、歴史的な背景とともに、ユーラシアの古層文化やオリエントの文化圏という共通の土壌から起こったからである。しかし各々の宗教は独自の価値観を持っていることも忘れてはならない。 我々が他文化を考える時、各々の文脈の中で見なければ、正しい理解にはつながらないのである。
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